丸石神紀行

十三年前の地図を頼りに丸石神を求め、山梨県を徒歩で旅したさまよいの旅行記。

  1. 序文:
  2. 丸石神誕生:
  3. 丸石神信仰:
  4. 丸石神分布:
  5. 終文:

2.丸石神誕生 - 1

 丸石神は、山梨以外にはほとんど見られない特殊な道祖神だ。社などの軒下で祀られず路傍に置かれる道祖神の中にあっても、更に異色を放つ神である。

 道祖神はサヘノカミとも呼ばれ、集落へ侵入する邪霊悪鬼を防ぐ為に、村境や峠、辻や橋のたもとなど、土地間の境界に置かれた。また、物的境界だけでなく、あの世とこの世の境をも司る神であった。道端を見れば分かる通り、その主体のほとんどが石であり、形状は神像や石の祠の他に、性器や男女の睦事像が多くを占めている。最初は赤面していた私が、そのうちドンと来い男根と大事な何かを忘れ去るくらい、性的要素が多いのだ。神名の「サヘノカミ」の「サヘ」も、性を強調する呼称である。道祖神は、庶民の日常に流れる性への思いが凝固した、性の神でもあるのだ。

 だが、丸石神は見た目の通りただの石だ。石像なり性器なり、何らかの拝みたくなるような形をしている訳ではない。そんな丸石が、何故神として祀られるのか。その信仰の始まり、歴史はどういう経緯を辿っているのか。そして何故、山梨だけにこれ程多く散布するのか。その謎のほとんどは闇に包まれたまま、解明されていない。

 不思議な神である。訳が分からないというか、可笑しい。写真の中には、ただ丸いだけの石が、これでもかと言うくらい大袈裟に祀られていた。丸石研究の大御所中沢厚の本を読み、何枚も何枚も丸石神の写真を見る内に、私は居ても立ってもいられない衝動に襲われた。丸石を見てみたい。可笑しすぎる。こんな変なもの、一目でいいからこの目で確かめたい。

 その思いにかられ、私は突発的に山梨まで向かったのである。

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