丸石神紀行

十三年前の地図を頼りに丸石神を求め、山梨県を徒歩で旅したさまよいの旅行記。

  1. 序文:
  2. 丸石神誕生:
  3. 丸石神信仰:
  4. 丸石神分布:
  5. 終文:

2.丸石神誕生 - 6

 さて、そろそろ出発せねばと顔を上げ、そもそもここはどこだろう、とようやく肝心な事に気付いた。忘れていたが、私は迷子だ。辺りを見回すと、前方に鳥居が見える。どうやら裏口から入ってしまったらしい。境内には家もあり、侵入者と言えない事もない。慌てて鳥居を出て、神社を振り返った。仰いだ鳥居には木わくで縁取られた金板が、「大石神社」という文字を刻んで、燦然と輝いていた。大石神社――名前からして、ひどく繋がりのようなものを感じた。石と言うからにはやはり、それにちなんだ言い伝えでもあるのだろうか。

 私は暫くその文字を仰いでいて、ふと思い当った。地図を取り出して乱雑に開くと、大石神社の名を探す。紙面に踊るその文字は、案の定、出発点の塩山駅を挟んで目的地の逆にあった。私は目眩がした。できるだけ多くの丸石を回り、今日中に帰らなければならないのに、鼻歌歌って逆行していた。最初から目的を忘れている。

 神社に軽く一礼するや否や、私は猛然ときびすを返した。

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