丸石神紀行

十三年前の地図を頼りに丸石神を求め、山梨県を徒歩で旅したさまよいの旅行記。

  1. 序文:
  2. 丸石神誕生:
  3. 丸石神信仰:
  4. 丸石神分布:
  5. 終文:

3.丸石神信仰 - 2

 丸石神は、山梨やその他の一部地域など、ごく限られた土地にしか見られない。その土地の人々は、何故丸石を信仰したのか。丸石信仰とは、一体なんなのだろうか。

 丸石を最初にとりあげたのが、山中共古著「甲斐の落葉」である。この貴重な本では、甲州の道にひしめく丸石神を上げ、『かってに増丸石を拾い来りて道祖神となすに、石数増えると道祖神さんがボコを持たれたという。』と述べている。

 「ボコ」とは子供の事で、石が子供を産むと言う伝説は、各地でみられるポピュラーなものだ。しかし自分達で持って来ておいて「あっ増えてるよ道祖神さまが子供を産んだー!」等の風景を思い浮かべると、つい口元が弛んでしまう。その噂が広まる中、「それ俺が持って来たんだ」と気まずく思う奴がどこかにいた筈だ。この本を礎に発展したのが、柳田国男の名著「石神問答」なのだが、どうした事か書中に丸石のまの字すらない。

俺が持ってきたんだ

 丸石が再び日の目を見るのは、昭和十六年発行の武田久吉著「道祖神」においてである。石神さんざめく、石好きには夢の様な本であるようだ。武田はその書中で、丸石を「原始的信仰対象物」として定義している。いつの時代にも丸石好きはいるようで、武田は丸石の謎を追い続け、その後「民間伝承」ニ八〇号で「丸石の信仰」という論文を発表している。武田は丸石を甲州独特の文化であると説明し、「天然に産出した丸石がいかにも珍らしいことから是に神性があると考えて、何かの神に祀ろうとする心持のある一方、道祖神の神体がどんな形であるのかあまりはっきりしないために、丸石を似て当てることになったのではあるまいか」と仮説を立てている。

 同じく形からの見解では、他に「図説甲斐の道祖神」で中島正行編者が、円い象形からは円満である事が連想され、円がいつの世も神の象徴とされてきた事実を述べている。また伊藤堅吉著「性の石神」は、甲州において男性器は棒形の彫像、女性器は円石に象徴されたという説を記している。

←前へ 次へ→ ↑上へ