丸石神入門

民間信仰中の石神信仰や、丸石神の基本編。

  1. 石信仰と道祖神
  2. 丸石神基本と分類

1. 石信仰と道祖神

石信仰

民間信仰の多くには自然崇拝が見られ、「八百万(やおよろず)の神」という言葉に表されるように、森羅万象のものに神霊が宿るとの考えがあった。
自然物を対象とした信仰は最も古く、自然の恵みや災いを畏れ敬い神格化した自然崇拝は、世界中のあらゆるところで今も見る事ができる。
石信仰も自然崇拝の一つであり、石や岩に心霊が宿るという信仰で、中沢厚の分類によると、以下の3種類となる。

磐座(いわくら)
磐座 磐座 京都・出雲大神宮
写真:求道者

神社が建築されるより前の時代、山や木、石などの自然物を、神の依り代として祀っていた。その名の表す通り、「磐=岩」「座=座席の座」で、神の座る岩である。時代が下り、神社の建設が増えていくと、その対象は磐座から神社へと移り変わっていった。現代でも、注連縄が張られた巨石や神木が各地に残る。


磐境(いわさか)
磐境 磐境 長崎・天手長男神社
写真:求道者

神石の上に神が顕れる。その点では「磐座」と同様、依り代的な役割だ。しかし日本書紀では、「磐座」「磐境」とあえて分けて表記されているので、「磐座」とは違う意味があった可能性も考えられる。実例が少ないため、磐座との違いは明確にされていない。


石神
石神 石神

磐座が神の降臨する場所とされているのに対し、石そのものが神として信仰の対象とされているもの。


流動する魂(タマ)と石信仰

日本人の死生観として、魂(タマ)は海のかなたにある他界からやってきて(生)、他界へ去ってゆく(死)というものがあった。タマが流動的だと考えられていたのだ。

流動するタマは、固体から離れたりと、何とも不安定なものと考えられた。 七歳の女児に対して、紐付き着物から大人と同じような帯を締める「帯解(おびとき)」という祝いがある。これは身を持ち崩さないようにとの意味もあったが、帯をしっかり締める事で、不安定なタマを体にしっかり留め置くという意味があった。
沖縄では子供がひきつけを起こすのはタマが離れてしまうからであるとされた。
他にも、タマが体から離れ生霊となる話や、離れたタマが白鳥やハエになって飛んでいったりと、様々な説話や昔話に「体から離れたタマ」の記述が見られる。

流動するタマは、窪みのあるもの、空洞などにスッポリはまって収まり易いと思われていた。と同時に、卵のように出入り口なくしてタマが入り込んだのが玉であり、石であった。
人の体もともとタマの入れ物と考えられていた。石もタマの入れ物・宿る物として考えられていたのだ。

石の成長信仰

石はタマ宿る多くの生物と同じように、生きていて成長するものと捉えられた。中に宿った霊魂が成長すれば、石も大きくなる。
折口信夫の「霊魂の話」には、以下の記述がある。

「タマが成長をするのに、何物かの中に入って、或期間を過すと考えた事から、その容れ物として、うつぼ舟・ひさごを考え、また衣類・蒲団の様なものにくるまる事を考えたのであるが、更にこのタマは、石の中にも入ると考えた。」
「拾って来た石が、家に帰りつくまでに大きくなったとか、祠に祀ったのが一晩の中に大きくなって祠を突き破ったとかいう話が、数限りなく諸国にある。」

成長してある時期がくると、石が割れて神が出てくると考えられていたのが、その中間の「石が大きくなると」という部分が発達して伝わったのではないか、と折口信夫は推測している。

石が成長するという話は、各地、各話に伝わっている。君が代には、「さざれ石の岩をとなりて」とあるが、これも「さざれ石が大きな岩となって」と、小石が成長して大石となる様子を歌っている。石の成長信仰は、広く受け入れられていたと言えよう。

石の中から小石が産まれる「子生石(こうみいし)」の信仰も派生した。
岩石から貴重な金属が生まれる事を考えると、石の霊性が更に強調され、金属を産むように子を為すのも頷ける。事実、不妊に効く「子生石」「ウブイシ」等、お産や子育てに関る石信仰も多い。

石信仰の対象の形
山神 山神(新潟県見附市) 長崎・天手長男神社 写真:求道者

祀られる石は、奇石・石棒などの形が主だが、男根・女陰や舟型・縞模様・色付き等、自然現象で現れたものを御神体にする所も多い。日本だけでなく、ケルトのストーンヘンジやコスタリカの巨石群等、石信仰の歴史や分布は世界に古代からあり、一筋縄ではいかない信仰である。


道祖神

地蔵

道端にあり、村の入り口や辻等、主に「境界」となる場所に祀られている。
村の守り神として、境に入り込む悪鬼邪霊を防ぎ、外部から悪いものが入らないようにとの、結界的役割を担う。 また、路傍において、旅や交通安全の神としても信仰されるようになった。

形は様々で、地蔵等の石仏や石棒などがよく見られる。
性器や、夫婦や男女の性交、餅つき道祖神(男女の性交を象徴)も多く、古くは男女一対を象徴するものであった。

「祖」の部首は「ネ(しめすへん)」で、神や祭事に関する文字に用いられている。「祖」の「且」にあたる部分は、男根の象形であり、性の威力を崇める処の大きい神である。
別名「サヘノカミ」のサヘも性を表す言葉であり、子孫繁栄の神としても信仰されている。

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